別にスランプだからというわけではないのですが(本当か)。

あまりにも更新が滞ってるのと、小説のサンプルはたくさんあったほうが良いという某所からのアドバイスにより、無料配布していた「あかでんと天浜線のエトセトラ。」の過去SSを転載していこうかと思います。

転載分はタグが2つつくよ。

そもそも「あかでんと天浜線のエトセトラ。」ってのは時事ネタで物語を作っていたわけなので、解説入れないとよくわからないよね!
解説はSSの後に入れておりまする。

まずはVol.1から。2009年10月~11月に配布していたものになります。
2本掲載の1本目。


――――――

 6月。あかでんはカレンダーをぺらりとめくった。来月は7月。
「もうすぐ夏休みだなあ」
 誰ともなく、ひとりごちる。夏休みになれば、通学の生徒さんの乗車は一気に減ってしまう。最近は人もそこそこ乗ってくれるようになったあかでんだが、通学の生徒さんが減ると、やはり見た目にもさびしい。
「生徒さん向け企画でもやろうかな」
 そして、これが、この時期のあかでんの口癖でもあった。

 
「ああ、夏休みね。確かに僕のトコも減るかな」
 西鹿島で天浜と食事しているときに、あかでんはこの話題を出してみた。
「まあ、でもしょうがないんじゃない? そっちは儲かってるんだから、そのくらいどってことないでしょ」
「儲かってるって。そんなことは無いぜ、さすがに」
 あかでんは苦笑した。確かに今現在は黒字経営だが、過去はひどいときもあった上に、現在は不況である。そうそうのんきなことは言ってられない。
「だからさ、スタンプラリーとかやったら生徒さんとかも乗ってくれるかなーって」
「ああ、スタンプラリーね。どこの会社でもやってるね」
 天浜はあっさりといった。あかでんもそれは知っていたのだが、あえて突っ込みはしなかった。
「そこでだよ、天浜君!」
「なんだよ、急に。気持ち悪いな、その呼び方」
「うち、いつもスタンプラリーやってるんだよ」
「あ、そうなんだ。じゃあやればいいじゃん」
 あっさりとした態度を崩さない天浜。だが。
「天浜も一緒にやらないか!」
「へ? ボクも??」
次のあかでんの言葉に、目を白黒させる羽目になったのである。
「ほらさ。オレたち一応つながってるじゃん。ここで」
「ああ、まあね……」
 天浜はどきまきしている。
「だから、オレ経由で君のとこ乗ったりとかって人も増えると思うんだよ、スタンプラリーやったら!」
「あ、ああ、そうかもしれないね……」
「オレの路線だけ乗ってもゴールできないような仕組みにしちゃえば、必然的に君のところを乗らざるをえないんだよ。そういう風にして乗客増やそうぜ!」
「ああ、そう……それもいいかもしれな、い、ね……」
 正直、天浜はあかでんのペースについていけなかった。ただ、相槌を打つのが精一杯で、内容をちゃんと理解していなかったのである。
 だから。
「よし、決定! 夏休みはよろしくな!」
 手を握って上下にゆさゆさするあかでんに、振り回されるしかなかったのである。
 
 
 数日後。
「あかでん!」
 西鹿島で一休みしていたあかでんは、急に呼ばれてびくりとした。見ればそこには天浜が。
「どしたん? 天浜。そんなに息を切らせて」
「どしたもこしたもあるかよ! なんだ、この企画書!」
「へ?」
 押し付けられるように差し出された書類には、ワープロで打たれた文章。
「ああ、遠鉄バスが作ってくれた奴か」
「誰が作ったっていいよ。問題は、内容だよ、内容!」
「別に……どこもおかしくは無いと思うんだけど……」
 あかでんは、何故彼が怒っているのかさっぱりわからない。
「十分、おかしい!」
「……どのへんが?」
 素で返すあかでんの態度が天浜の怒りを買っていることに、あかでんは気づいていなかった。あかでんとしても本当にわからないのだからどうしようもないのだが。
「小学生一乗車50円って何!」
 ばん! と天浜は紙を叩きつける。
「いや、うち、いつもやってるんだけど……」
「それは知ってる。聞きたいのは、なんで僕まで1乗車50円になってるんだよ!」
 それを聞いて、やっとあかでんは彼の怒りの意味を知った。
「上の人が、そっちの上の人と話したんだけど、うちが50円でそっちが通常料金だと、逆に天浜線に乗らなくなっちゃうから、統一しましょうって話になったんだよ」
「統一しましょうって、これじゃ人が乗っても赤字じゃないか!」
「そんなこと無いよー。オレら、それでも黒出せるもん」
 あかでんはさらっと言った。
「それに、1乗車50円ってのは小学生までだから。親がついてくるってパターンもあるし、小学生同士だったとしてもひとりでやる子はあんまりいないから」
「そうなん?」
 天浜はうーむとうなった。
「でもさ。あかでんだけではゴールできないって言ってるけど……」
 と、スタンプラリーの台紙を指差す天浜。
「遠鉄バス含めたら、そっちだけで完結しちゃわないか?」
 そうなのである。あかでんのポイントは4つ、天浜線は5つあるのだが、これに加え、遠鉄バスのポイントが2つあるのだ。ちなみに、スタンプラリーのゴールはスタンプ5つである。
「うん、まあ、そうなんだけどね」
 あかでんはいともあっさり認める。
「でも、うちの駅からは遠いとこばかりだから、逆にいいかなって」
 とはいえ、あまりのあっさり過ぎる反応。天浜はもう何もいえなかった。
「まあ、これで乗客増えるんだろうね?」
 天浜線のいぶかしげな言葉に、あかでんは大きくうなずいて、
「だーいじょうぶ! オレを信じてみんさい!」
Vサインをしたのだった。


 さて、この乗客アップ作戦。結果は夏休みが終わるまでわからないのであった。

――――――

たしかこれを書いた年に、天浜さんも夏休み期間小学生1乗車50円企画を始めたと記憶しています。
……もしかしたら、その前からやっていたのかもしれないなあ…。記憶違いがありましたら、ご教授頂きたく。
遠鉄さん(あかでん・バス共に)の夏休み期間小学生1乗車50円企画はそれより前から開催されていたはずです。
で。この年になってからやたら遠鉄さんと天浜さんのコラボ企画が増えたなと思ってるのですが…。

アップにあたって一人称に揺れがひどかったので修正しました。
あと一部会話の言い回しも修正しています。